2023年8月の短歌

*8月1日 お題【火曜日】

火曜日の朝だけ並ぶ人がいる バス停前でその人を待つ
週明けの火曜日はまだ「頑張ろう!」って気になれる 残りは三日
あくせくと働く人の火曜日をカフェで見下ろすのんびり日和
桃色の給食タオルを持っていく火曜日は確かおみそしるの日
君はもう僕のことなど忘れたか ひとり呟く火曜の夜中

*8月2日 お題【魔法】

夢を見て呪文を唱えて操った魔法を今でも忘れずにいる
友と居た日々は何にも代え難い魔法にも似た青春の風
杖向けて三・二・一で振り下ろす ハロウィンの日にトリート目掛けて
少年よ 短い魔法を愛しんで 青くて尊いその一瞬を
魔法でも奇跡でもなく横たわる幸福な日よ 明日も来たれ

*8月3日 お題【緑】

夏風に揺れる木の葉がさらさらと遠く奏でる緑の音符
街路樹よ 枯れずにいつでも青くあれ 我が愉しみは緑と共に
クレヨンの緑で葉っぱを描きました 葉脈だけを白く残して
夜の道照らす緑の信号の光頼りにひとりドライブ
どこまでも歩いていきたくなるような緑の道の頂目指し
サボテンの小さな鉢に水をやり寂しくないよとあなたを想う

*8月4日 お題【チケット】

鉄道の歴史調べてチケットの日時の工夫に弾ける浪漫
改札の前でチケット買い求め 僕らの旅のはじまりはじまり
歩いても帰れる距離でも定期券あるとついつい使いたくなる
絶対に負けられないねこの試合 憧れの地への切符のために
あれ、どこだ 確かにここに入れた筈 失くした切符を必死で探す
人生は片道切符の旅のよう 何処にも帰る場所などなくて

*8月5日 お題【未来】

この先も君の隣にいられたら まだ見ぬ明日に思いを寄せて
新しい今日は昨日の未来でもやがて過去へと変化するもの
少しだけ未来旅行に興味ある あなたと暮らしているか知りたい
君と歩む未来は永劫奪われた 正しくいうなら奪ったのは僕
未来とは幾筋もある可能性 一つを選んだ結果が現在

*8月6日 お題【残る】

おこづかい もらった額と使う額 あれ、おかしいな 残りがゼロだ
店の隅 売れ残り品の並ぶ棚 寂しくなって目が逸らせない
広い部屋 一人残された私を置いてけぼりで世界は回る
開店と同時に品切れするケーキ ひとつだけだけど何とか買えた
暦では夏も終わりというけれど晴れ渡る空に残暑がぎらり

*8月7日 お題【祭り】

四年ぶり お神輿 踊りに大舞台 露店の賑わい おかえり、祭り
誰かしら毎日生まれているのなら毎日祭りを開いて祝おう
どこかから祭囃子が聞こえれば宴の始まり 飲み食い歌え
浴衣着て団扇片手に君の手と触れた思い出 打ち上げ花火
誕生日 やっと生まれてきた君が少し大人に近付く記念日

*8月8日 お題【扇風機】

戸を開けて今年の出番を告げてすぐいい働きをしてくれる君
クーラーを点けて寝るのは気が引けて君に一晩仕事を頼む
ゆっくりと回り始める瞬間を風車に重ねて行きたい和蘭
ジムの中 汗を流していい気分 涼風浴びてもう一頑張り
子どもらの声を震わせ楽しませ 大人の身体を風で抱き締め

*8月9日 お題【吹く】

君の吹くクラリネットに想い馳せ大地の風や光を描く
吹きすさぶ冬の嵐に舞う枯れ葉数えて歩いて私はひとり
ひもすがら笛を吹いては考えて歴史に眠る音符よ響け
涼風が窓から部屋へ吹き抜けて秋の匂いを感じる夕べ
ホラを吹く君の陽気な笑い声 幾年経ても忘れられずに

*8月10日 お題【飾り】

指先できらりと光る青い海 ネイルで綴る夏の思い出
どうしても薬指の幅知りたくて眠る君の手大事に掴む
吐く息の白さに負けてしまいそうな時は長いマフラー巻いて
髪飾りどっちにしようか迷っちゃう 忙しい朝の楽しいひととき
お揃いでスマホにつけたストラップ 今日もあなたを傍に感じる

*8月11日 お題【答える】

答案の白い部分を埋めるには少し知識が足りないようだ
質問が来れば来るほど回答がこんがらがって頭もショート
あの夜に黙りこくった君のこと忘れてないよ 返事を待ってる
答えよう 何度も検算した式の終わりにあるのは「あなたが好きだ」
子供らの無垢な質問 答えれば答えるほどに謎めく世界

*8月12日 お題【からい】

あの時はあんなに辛く感じたが今では甘いお子様カレー
辛口のコメントばかり見ていても良いことないよ 少し眠ろう
甘くても辛くてもいい もう一度君のカレーを味わえるなら
「からい」ってどうして「つらい」と同じなの 辛くったって辛くないのに
君のキス ハバネロソースを舐めたよう 顔は赤らみ熱持つ身体

*8月13日 お題【弁当】

スーパーやコンビニに並ぶお弁当 冷めても美味しい魔法の味わい
高校の三年間を共にした弁当箱をそっとひと撫で
間違えて家に忘れてきちゃったよ ほかほかご飯と冷食弁当
当然のように作ってくれたけどありがとうって言えば良かった
初めての自分のための昼食を母に教わり作りし夜明け

*8月14日 お題【勉強】

学校で飽きても家でお勉強 いつまで続く 学習日和
意外にも解き放たれたその後で学び直しをしたくなるもの
学びっていくつになっても新鮮ね 人生きっと死ぬまで勉強
学生の頃に分からず放り投げた本をようやく開いて学ぶ
あの頃の鎌倉幕府はいい国で 今は違うと衝撃を受け

*8月15日 お題【止まる】

驚きで息が止まった瞬間を忘れられずにあの日が巡る
手を引かれ赤信号で立ち止まり ごはんはなあにと訊ねし夕べ
夜更けまで続いた雨音 いつの間に止まって君の寝息が聞こえ
席替えであの子と隣 どうしよう ドキドキしすぎて鼓動が止まる
止まっても進んでも闇 振り向いて戻れば光というわけでもなし

*8月16日 お題【急ぐ】

黄昏の家路を急ぐ子供らの背中にかつての自分を重ね
暗算に三度失敗して焦り 急がば回れとペン握り締め
「結論を急ぎすぎても」「そうやって逃げてる間に締切当日」
お茶会へ向かううさぎの後を追う 急げ急げと尻尾が揺れる
悩むより手を動かして昨日より一歩でも前へ急がず進め

*8月17日 お題【牛乳】

背伸びして理想を語ってみるけれど好きになれない牛乳パック
「夕飯のシチューのために買ってきて」 言われて忘れて今夜はカレー
ひとりでは飲みきれなくて君がいた頃はと過去を振り返る夜
コーヒーとぐるぐる混ぜたカフェオレが 美味しいねって笑顔をつくる
寒い日はホットミルクに限ります ハチミツたっぷり 甘くてほっこり

*8月18日 お題【数】

誘われて数合わせだと思いきや意外な出会い 幕開けの春
イチとイチ足して足してを繰り返しセンの想いで折り鶴を編む
ゼロとイチ ハローワールドの世界に複雑怪奇な想い(コード)を描く
一億と少しの人が住む国で 狭くて青いわたしの世界
風呂の中 数を百まで数え終え 身体ぽかぽか 心ゆらゆら

*8月19日 お題【魚】

行きつけのお店で食べる昼ごはん 今日のメニューはアジの焼いたの
何回か別の誰かと行った場所 泳ぐ魚はいつも変わらず
試される食事マナーと箸遣い だから魚はちょっぴり苦手
青空を泳ぐ無数の白い雲 姿はさながら魚のようで
暖かな海に潜れば鮮やかな魚の楽園 沖縄の夏

*8月20日 お題【朝】

おはようと言ってくれてたあの日々は戻ってこない 君にさよなら
夢を見ておいしいケーキを食べたから 今朝のメニューはホットケーキね
沈む月 白む空から何処へ行く 夜の終わりにそっと目を伏せ
大丈夫 明けない夜はないからと 朝焼け見ながら君の目に涙
夏休み 早起きだけは頑張って毎朝通ったラジオ体操

*8月21日 お題【歴史】

歴史とは何かと辞書に聞いてみて僕にも歴史があると気付かされ
高校の歴史の授業を振り返る 睡魔とテストと戦いの日々
街角の石碑を見付けその昔この道を通った人々を思う
川底にある石ころに秘められた地球の歴史はざらざらでした
故郷の歴史を調べて再発見 世界はまだまだ広がっていく

*8月22日 お題【植物】

ヤドリギの木を探してはクリスマスの夜を想像 上手くいくかな
幸運は踏まれて蹴られて生き延びた先にあるのと四つ葉を見やる
毎朝の日課にしてた水やりも梅雨の間は少しおあずけ
インテリア華やげたくて買った鉢 生い繁る葉に命を感じ
テーブルの木目にじっと見つめられ大樹の呼吸に耳を澄ませる
「そうなんだ 初めて知った 紙のもと 木でできてるの」と目を輝かせ

*8月23日 お題【動物】

幼き日一度も行きし記憶なし 動物園に憧れ募り
友の家 ケージの中で走り回る小さき命 遠くで愛でる
生きものはいつか死ぬから生きるもの 私も君も例外でなく
空想の世界の果ての幻の獣の姿 夢に現る
アスファルト横切る白い野良猫よ どうか元気に暮らしておくれ

*8月24日 お題【旅】

行きたいな 行けたらいいな 言うだけで行った気になる海外旅行
気が付けば随分遠くへ来たものだ 旅の行方を私は知らない
時間だけ別の所に行けるなら死後の様子を眺めてみたい
時と場所選ばずできる小旅行 地図を眺めてストリートビュー
遠い地に来ても変わらずあるチェーン店に安心 いつもの頼む

*8月25日 お題【話す】

こんにちは 返ってきたら さようなら 一瞬の間を言葉で埋めて
相席で知らない人と話すのは天気と好きな食べ物のこと
最近の家電はちょっとおしゃべりで 一人暮らしも悪くはないね
何だっけ 話したいことあったのに忘れちゃった と君は微笑む
コーヒーを一杯頼んで数時間 咲いた話の花は何色

*8月26日 お題【いし】

この傷は並みの医師には治せない 薬は時間と君との思い出
夏休み 海辺で輝く石に会い調べ尽くした自由研究
はい、いいえ 意思を確かめてみたけど底が見えないあなたの心
年が明け新たな意志をその胸に ……古びた心はいづくにか去る
今は亡き人の心を受け継いで守ると決めた平和の炎

*8月27日 お題【食べる】

いつだって「いただきます」を言ってから食べるあなたの笑顔に見惚れ
文字を食み頭の中で意味を呑み 今日も読書でおなかを満たす
家庭科の調理実習 友だちと食べるしょっぱい肉じゃが
久々にまともな自炊をしたからか美味しく感じるひとりのランチ
買い物をする時既に始まって皿を拭くまで料理は続く
太陽を灰色の雲が食べたよう 突然の闇と雨と雷

*8月28日 お題【きる】

トントンと野菜を切っている君の横顔見ながら鍋かき混ぜる
あの子とは縁が切れたと思ってた 年賀状読み過去振り返る
お祭で着ただけの浴衣探し出し夏の終わりをひとり愉しむ
色紙をちょきちょき切って子が遊ぶ 後片付けは私の仕事
真っ白なシャツに初めて袖通し 今日から僕は会社の歯車

*8月29日 お題【作る】

紡がれる私と貴方の物語 続きはいつまで作れるだろう
休みの日 家じゅうきれいにした後にご褒美欲しくてクッキー作る
見え透いた作り話に乗っかって沈む船から地獄にダイブ
作られた世界の感動物語 それでも私は涙を流す
音を編み 呼吸を合わせて歌を乗せ 僕らの心が世界に響く

*8月30日 お題【過去】

もし仮に過去から今への道程で歴史と異なる動きがあれば?
過去の人 そう割り切って目を背け進んだつもりで逃げているだけ
今だけは忘れていたい あの夜を 最大幸福をくれた人を
君の背に長く伸びゆくその影は君の辿った歴史を語る
過ぎた日は変えられないというけれど気持ちはいつでも書き換えられる

*8月31日 お題【夢】

何色か 彼が描いていた夢は せめて色だけ現実にしたい
ねえ君は大きくなったら何になる 本当になる? なれると思う?
夢にだけ出てくる場所を訪ねたい 学校と家を混ぜた洋館
幼き日友と語りし夢なれど驚くほどに眼前にあり
現実は無限に近い可能性ひとつ残して捨てた結実

文章の長さ: 詞・俳句・短歌など
ジャンル: 現代日本 日常
恋愛傾向: 恋愛傾向なし 片想い 両想い 失恋
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