2023年6月の短歌

*6月1日 お題【看病】

病床に伏した私に母の手が触れた温度を夢に見る春
友からの応援メールを受け取りて明日こそはと早めに眠る
はいどうぞ、とっておきよと君は言い 雑炊スープを枕元に置き
ただ一人痛みに耐えて夜になり 無為という字が脳裏をよぎる
特段に心配というわけじゃなく君なしの日が退屈なんだ

*6月2日 お題【黄色】

歩行者のためにはないの 何故だろう 一瞬だけの役割だから?
美味しそう 君が作ったオムライス ケチャップ使って互いに落書き
踏切の前で電車の過ぎるのを待つ君を見て綺麗だと思う
春に咲く花の名前が由来だと照れくさそうに笑いし君よ
黄金の葉がひらひらと地に落ちて秋は過ぎ去り木枯らしが吹く

*6月3日 お題【通知】

目をやれば二十二件の通知あり 君との雑談今日も続いて
画面横パソコン仕事の傍らに表示されるは遊びの誘い
突然の緊急速報 石と化し天にこの身を委ねる数分
目を閉じて耳を塞げどビビッドに響くニュースが手に絡み付き
夜溶かし遊びし時に終わり告ぐ「電池の残りがもうありません」

*6月4日 お題【紫】

その色は赤と青とを足した色 甘酸っぱさに見惚れちゃう色
駅前で買った揃いのアクセサリー 綺麗な蝶が鞄で舞って
虹を見て探すけれども見付からず 赤橙黄緑青藍……止まり
夕暮れの空の様子が左手の薬指にて輝き放ち
この香り何だったかと立ち止まる 花壇を彩るラベンダーかな

*6月5日 お題【驚く】

駅前の人の多さに手を握り離れぬようにと歩いた夏の日
突然の雨に降られて泣く人の声に驚き窓外を見る
思うより上手くいかずに首傾げ抑えられない心のざわつき
朝来ぬとカーテン開けられ驚きぬ 夢の終わりは今日の始まり
鐘の音の強さ鋭さ壮大さ 空気の震えに耳聳てて

*6月6日 お題【夕方】

あの頃は君がいたなと思い出す 一人で歩く秋の夕暮れ
放課後はいつものお店 週末の予定を決める作戦会議
街中で擦れ違う人の歩く先 行きか帰りかそれとも夜か
スーパーの割引商品手に取りていつの間にやらカゴは満杯
ただいまを言えばおかえりと返事のある日常が何より大事

*6月7日 お題【ポスト】

まだかなとポストを開けて嘆息し文通相手(ペンフレンド)に想いを馳せる
「さあ進め! 次の時代はすぐそこへ!」 言うは易く行うは難し
メッセージ受け取りたくて問い合わせ 新着なしに肩を落として
年の瀬に贈る年賀の挨拶状 めでたい年になればと願う
温かく優しく強い君宛ての愛をポストへお届け完了

*6月8日 お題【時間】

白うさぎ 急げ急げと走り出し 不思議な茶会の始まり始まり
過ぎ去れと思う時ほど執拗で 行くなと乞うほど駆け抜けてゆき
春に夏 秋冬過ぎてまた春へ どこまで加速を続けるものか
試験中チラリと見上げる時計ほど秒針がすぐ回るものなし
鐘が鳴りいただきますを唱えれば君のランチの幕開けの時
放課後のおしゃべりタイムに皆夢中 手元の宿題置いてきぼりで
君の居た日々を今でも忘れずにイマはそのまま凍えて光る

*6月9日 お題【ロック】

グラス手に氷をカラリと鳴らしては大人の気分を味わう夜更け
岩を越え頂に立ち見る景色 遥か遠くに君がいる街
ライヴより心昂るものはなし ギターと喉と魂鳴らせ
憧れの歌手が奏でし音源(レコード)を聴きて刻みしリズムとビート
気まぐれで立ち寄った店(バー)の片隅にあなたが飲んでた酒瓶見付け

*6月10日 お題【衣服】

衣替え 久しく見ずにいた服を着ては喜び進まぬ作業
雨の日はおうちデートをしましょうか 貴方のためのファッションショーを
オフの日にクローゼットを眺めてはコーディネートに悩んで半日
衣食住一つ選べと言われれば 私は迷わずカワイイを取る
いつもなら服に頓着しない君 今日はやたらと見た目気にして

*6月11日 お題【奏でる】

一心に鍵盤叩くその姿 耳よりも目で音を捉える
放課後にピアノを囲んで声合わせ紡ぎし歌が耳に残れり
レコードに刻んだ音符の数々よ 今も変わらず元気でいるか
夜もすがら何かを唱える蛙たち 季節の変わり目 夏がまた来た
旋律を練って歌って書き記し 君の言葉をそっと重ねる

*6月12日 お題【テキスト】

駅前のファストフードの店の中 テキスト開いて駄弁る学生
テキストの要点だけを取り出してまとめたノートは今でも宝
通学の満員電車の片隅で小さなテキスト読む中学生
小説をテキストファイルに書いていた昔のことをふと思い出し
その文字はゼロとイチとの組み合わせ なのに私の心は震え

*6月13日 お題【朝】

幾度でも目覚める度に思うこと 「いつになったら終われるのかな」
「おはよう」と耳元で言う君の声 もう聞けないのは僕だけのせい
夜が明け東の空を太陽が待たせてごめんと急いで昇る
一晩中ゲーム尽くしで朝迎え 欠伸しながら布団に入り
制服やスーツが忙(せわ)しく道を行く 私はカフェでのんびり過ごす
隣室で鳴る目覚ましに起こされて始まる変わり映えない一日
おひさまが空を元気に歩いてる 今日もいいことあったらいいな

*6月14日 お題【オレンジ】

会いたいと思う気持ちを夕焼けにそっと溶かして明日もひとり
いつの間に電池の残りがオレンジに 充電コードを慌てて探す
喫茶店 子どもの声に振り向けばオレンジジュースに目を輝かせ
虹の中どうにかこうにか探せどもオレンジ色は見付からぬまま
帰り道見上げた夜空に浮かぶ月 太陽の如く大きく朱く
オレンジのノートに日々を記録して読み返しはせず今日で五年目

*6月15日 お題【旅】

人生は一度きりとは言うけれど旅は幾度も出直せるもの
旅先の名も無き道を歩く時ひとりなんだと思い知らされ
あなたから旅の土産を貰ったら部屋に飾って大事にするわ
この道が何処へ続くか分からない けれど私は歩き続ける
二年前僕らが始めたこの旅はそろそろ終わりに近付いている
蘇る修学旅行の思い出を心に仕舞って新幹線へ

*6月16日 お題【空】

眼前に広がる海の青色は空を鏡に映すが如く
朝焼けの中に飛び立つ烏らよ無事に一日過ごせと祈る
夜の闇 あるのは星と雲と月 梅雨の切れ間は静かに更けて
地と空を交互に見ては不思議がり影送りする子供らの声
君はよく空の涙に濡れたがる 僕は慌てて傘差して追う
太陽のいない間にこっそりと逢瀬重ねる星たちの空

*6月17日 お題【店】

ご希望を伺いますよ そうですか それならこちらはいかがでしょうか
日曜日 いつものお店は大混雑 さっとランチを済ませて帰る
帰り道 焼き鳥を待つ行列に気付けば加わり逃した電車
本棚に所狭しと並ぶ本 全部買いたくなっちゃう不思議
街角のブティックの前 通る時 服を眺めた在りし日の夏
平日にショッピングモール散歩していい汗かいたと飲む抹茶ラテ

*6月18日 お題【ディナー】

今日だけよ 豪華なディナーは今日だけよ 月に何度も呟く言葉
日曜日 友と語らい夜が更けて二十三時に遅めのディナー
ファミレスの朝のサービス バイキング 夜もやっててくれればいいのに
夕飯を何にしようか悩む君 魚がいいなと提案する僕
在りし日の家族の時間思い出し ひとりの夕飯 何処か切なく
ハンバーグ カレーに唐揚げ エビフライ どれも食べたい欲張りディナー

*6月19日 お題【似る】

おそろいの顔 おそろいの髪型と おそろいの服で街をお散歩
私たち似てないってよく言われるね 趣味も好みもおんなじなのに
定食によく似た揃いのキーホルダー 日替わりで付けて二人で微笑む
親が子に似ることなんてあるのかな 子が親に似るのなら分かるけど
たまたまか それとも運命だったのか 今日は全員緑色のシャツ
灯火を暗闇で見ると何となく太陽に似ている気がしてくる

*6月20日 お題【繰り返す】

今日は今日 明日は明日 でも明日(あす)は 明日が今日で今日は昨日で
リピートの記号で戻り始まりへ またリピートで次は終わりへ
無限回繰り返しても終わらない痛みや辛さ それが人生
しまったと思った時にはもう遅い 無限ループの輪にまた嵌まり
一括弧リピートしたら二括弧へ ダルセーニョの位置目で追いながら
君のいた日々の終わりが焼き付いて一度きりなのに夢幻に響く

*6月21日 お題【太陽】

気が付けば日が随分と長くなり今日が夏至だとカレンダーで知る
何度でも朝に戻されまた夜に向かう 無色の日々送りつつ
眩しくて直視できないくらいならいつも視界の外れに置こう
太陽の光と熱を浴びながら日々を歩いて命を紡ぐ
雨空のどこかに光を探しては見えないことに安堵を感じ
真夏日の白い砂浜青い海 バカンス日和の束の間のイマ

*6月22日 お題【星】

「あれは何?」「アルタイル、ベガ あとデネブ 夏を彩る三角形よ」
もしも今何かの拍子に心臓が止まるとしたら星になりたい
星型のクッキー焼いていいにおい 袋に閉じ込めリボンで飾る
クリスマスツリーのいちばん上に置く星を夜空に探しに行こう
占いを信じる性質(たち)ではないけれど星座は毎日欠かさずチェック
昼間でも空には星が浮かんでる ないのにあるって不思議なものね

*6月23日 お題【仕事】

生きること それは仕事と人は言う 生まれて死ぬまで無賃残業
朝起きて目覚まし時計を見て寒気 今日は休日 気付いて溜め息
残業を終えて帰ればもうテッペン 次の仕事は八時半から
朝礼の放送と共に「もうそんな時間なのか」と慌て始めて
定時だし華金だから帰ります お先に失礼しますと言って
休憩のコーヒー一杯 甘いもの また頑張ろうって思えるひととき

*6月24日 お題【買う】

あれ買ってこれも買ってと騒ぐだけ騒いで満足 何も買わない
その人は時間を売って物を買う 私はお金で時間を潰す
ボールペン売り場に来ると悩んじゃう どの色にするか何本買うか
売れるかな 買えるといいな ッワクワクとドキドキだらけの夏の祭典
すごい出来! 想像以上のサービスに投げ銭しつつ感謝を伝え

*6月25日 お題【並ぶ】

本棚に並べた本を眺めては満足にっこり おやすみなさい
開店の前から長蛇の列作り 目当てはケーキのバイキングかな
昨日から逃れるように今日歩き明日へ続く道筋(ルート)に並ぶ
西瓜メロンチェリーにオレンジ スーパーの棚に並ぶは鮮やかフルーツ
文字並べ入れ替え差し替え遊んでは一日暮らし夜に歌詠み
君はもう隣に並んでくれないしだからといって代わりなどない

*6月26日 お題【カフェ】

開店と同時に店に入っては閉店間際に会計をして
学生もサラリーマンも主婦たちもコーヒー飲んで笑顔を湛え
カフェモカはカフェにココアを入れたもの? それともチョコとミルク入りなの?
起き抜けにカフェで一息吐くとしてエスプレッソをアイスに掛ける
休日に欠かさず作るカフェごはん 君のレシピに外れはなくて
訪れた人を満足させるのは寛ぎソファとおしゃべりタイム

*6月27日 お題【空白】

あの日からずっと寂しい右隣 誰かが代わりになる日は来ない
友達に借りたノートの空白を埋める落書き見てはにやけて
空白の二時間半に何してた 訊ねる君はまるで探偵
文章の余白にコメント書き込んで届けばいいと両手を握る
びっしりと書いた黒板その文字を消して気持ちを次に切り換え

*6月28日 お題【走る】

さあ急げ もうすぐバスが出てしまう いつも通りの旅の始まり
車窓から見える景色が走るのか それとも私が走っているのか
ひたすらに走り託したバトンリレー アンカー信じて勝利を願う
鍵盤を指が綺麗に走り出し奏でるショパンに思わず目を閉じ
憂鬱を吹き飛ばすかのような雨 雷鳴と共に空気を走り

*6月29日 お題【冷たい】

頭から背中へ伝う冷たさは雨かそれとも悪い予感か
ただいまを言って冷房すぐ点けて食べるアイスを至高と呼ぼう
そうなんだ 君ってそういう人なんだ 温度の低さを感じた火曜日
渓流の滝の音色に足浸し夏に涼しさ見出す休日
この冬は特に冷たく感じたよ 隣に君が居なかったから

*6月30日 お題【段ボール】

部屋の中溢れんばかりの段ボール 引っ越し作業はまだまだ続く
ゴミ置き場 通販用の段ボール重ねて思う 「買い過ぎたかも?」
段ボール 切って重ねて組み立てて ぼくたちだけの基地が完成
真っ白な段ボール箱畳んでは貰ったメロンの味思い出し
この部屋に立派な家を建てるんだ 段ボール箱を集めた家を
勉学に励むと誓い半年後 積まれた本と段ボールたち

文章の長さ: 詞・俳句・短歌など
ジャンル: 日常 現代日本
恋愛傾向: 片想い 両想い 失恋 恋愛傾向なし
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